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ポートフォリオ

1. 分散投資とは?

この章の内容は金融工学のポートフォリオ理論を数式を使わずに説明しようとしています。少し難しい内容になっていますので、読み飛ばしても大丈夫です。

分散投資の概念は近年になってコンピューターの登場とともに発展してきました。株式市場での過去のデータを統計的に解析して、どういう組み合わせで株を買ったらリスクを低くできるか、という事を調べていったら分散投資(Diversification)になったのです*1

分散投資の元になる考えは、いくつもの株を持って、リスクを分散することにあります。1社の株だけに投資してその会社が倒産してしまえば全て失ってしまいますが、100社に投資すれば、1社が倒産しても被害は少なくて済みます。倒産は極端な例ですが、株価の上下は1つの会社だけであれば激しいですが、何社もの動きを平均化すれば、上下の幅は抑えられます。

2つの株のポートフォリオ

X社の株価格の上下動

例えば右のグラフのように価格が上下しながら、平均すると段々価格が上がっていくX社の株を考えてみましょう。青の線で表されるグラフがX社の株価の動きです。


Y社の株価のグラフ この株価は上下を繰り返しながら、右肩上がりにだんだんと価値が高くなっていきます。しかし、短期的に見ると大きく株価が下落することもあります。この株だけに投資するのでは不安なので、次にY社株(オレンジの線)と合わせて2つの株に資金を半分ずつ投資するポートフォリオを考えます。

この2社はまったく別の業界で、一方の株価が上がればもう片方の株価は下がるような動きをしています*2。そのため、合計すると上下動が少なくなり、なだらかな線になります。 2社合計の利回り

ここで重要なのは、この2社の株価はお互いの株価に無関係に上下している事です。もし2社の株価が同時に上がり、同時に下がるような関係だった場合、2つの株を買っても動きはなだらかにはなりません。

株価の相関関係

相関関係(Correlation)とは、2つの株価の動きがどの程度似ているかを統計的に表したものです。相関関係があると(正の値だと)2つの株価は同時に上下し、相関関係が負の値だと、片方が上がればもう片方は下がる、という逆の動きになります。相関関係が無い場合、片方が上がったとき、もう片方は上がるときもあれば、下がるときもあり、値動きが無いときもあります。つまり、無関係な状態です。

上記の2社を使ったポートフォリオで重要だったのは、2社の株価が別々に上下する事でした。つまり、相関関係が無い事が重要だったのです。現実的には、2社だけでこのようになだらかなカーブにする事は難しいものです。しかし、10社、20社とポートフォリオの株が増えると、それぞれの株価がバラバラに動く事によって全体的に利回りがなだらかになります。この利回りの上下をなだらかにする事が、分散投資の本質です。

リスクは毎年の利回りの変動で計られます。利回りの上下をなだらかにする事により、毎年の利回りの変動が平均化されますから、その分、リスクが減ったといえます。つまり、上下動が少なく、毎年の利回りが大きく変わらない状態が低リスクな状態になります。

2. 分散投資のルール

分散投資を行うとリスクが減る事が分かりました。ただし、リスクを減らすためにはいくつかのルールに沿って投資しないと、投資は分散しているけどリスクは分散されてない(減っていない)ということになってしまいます。そこで、分散投資の基本ルールを見ていきましょう。

似たような株を買わない

例えば航空業界の株を何社も買っても、航空業界全体が低迷してしまえば、自分の持っている株のどれもが値下がりしてしまいます。つまり、1社のリスクを分散しても、航空業界自体のリスクは分散できていないのです。そこで、航空業界とは直接関連が無く値動きをする業界の株を買うことでリスクを分散できます。食品、金融、自動車、医療、ハイテクなど、違う業界の会社から選べばその業界の不調を別の業界の好調でカバーする事ができます。

何社もの株を買う

数社の株を買っただけでは、株価の上下がうまく打ち消しあわないと、上記のグラフのようになだらかにはなりません。そこで、何社もの株を買えば、全体としてよりなだらかになります。20〜30社程度の株を持てば、リスクはS&P 500 Indexと1 Percentage Point ほどしか違わなくなります。つまり、うまく株を選べば500社の株を買わなくてもS&P 500 とほぼ同じ値動きをするポートフォリオを組める事になります。

十分な資金を用意する

何社もの株を買うとなると、手数料だけでも費用が多くなります。最近はディスカウント証券会社でかなりの量(例えば5000株など)まで非常に安い手数料で買えます。それでも、30社の株を買うとなると、1回の手数料が$10としても$300掛かります。全体の資金に対して手数料が1%以下になるようにするには、この場合、最低でも$30,000が必要です。しかも、これは株投資だけの分なので、後述するポートフォリオ全体のバランスを取るためには、これ以上の資金総額が必要になります。

頻繁に売り買いしない

一度、分散投資としてポートフォリオを組み、30社の株を買ったとします。市場のそのときの状況により、株価が大幅に下がる場合もあるでしょう。そういった場合でも安易に売り買いして保有株を変えてしまえば、分散投資の意味が無くなってしまいます。売り買いのために手数料が掛かるばかりでなく、タイミングを計って売ろうとすることにより、多くの場合、損失が増えていってしまいます。一度買ったら、自分の決めた投資期間(最低10年)は売らない*3つもりで投資しましょう。

3. 分散投資のリスクと利回り

リスクと利回りで使ったグラフを、分散投資をした場合にどうなるか見てみましょう。5つの株を組み合わせてポートフォリオを組む事を考えます。個々の株のリスクと利回りは◆の点で表されています。この5つの株はそれぞれ相関関係が低いとしましょう。5つの株をさまざまな割合で組み合わせたとき、出来上がるポートフォリオの組み合わせは弓型の実線の内側(青で示された範囲)になります*4

分散投資のリスクと利回り

グラフを見ると面白い特徴がわかります。青い範囲の左側の境界線をEfficient Frontier (効率的フロンティア)と言いますが(これは覚えなくても大丈夫)、この境界線は1つの株では実現できないリスクと利回りの組み合わせを示しています。

一番左端の点(オレンジの点)を見ると1つの株では実現できない低いリスクの投資ができることになります。これが分散投資の威力です。「どの株が良いか」といくら探しても、ちょうどオレンジの点のような低いリスクで12%の利回りを得るような投資対象はありません。しかし、5つの株をうまく組み合わせる事によって、ちょうど自分にあったリスクと利回りの関係のポートフォリオを組む事ができます。

リスクフリーと組み合わせる

5つの株の分散投資では、一番リスクを減らした状態でもオレンジの点のリスク(14%)でした。そのときの利回りは12%と魅力的なのですが、リスクが高すぎます。そこで、上のグラフで見たポートフォリオとリスクフリーの投資(通常はTreasury Bill)を組み合わせる事を考えてみましょう。すると、自分のリスクにあった投資割合を決める事ができます。前章で見たバランスの取り方を参考にして、線を引けば、さまざまなリスクと利回りの割合を選ぶ事ができます。

分散投資とリスクフリーの組み合わせ

リスクを減らして5%程度にしたいとき、直線状の青の点で示されるポートフォリオにすれば、利回りは約8%になります。このポートフォリオは株が約3割、Treasury-Billが7割という組み合わせで実現できます。株は赤の点で示される5つの株式の組み合わせに投資します。

リスクフリー資産と組み合わせてポートフォリオを作るとき、分散投資で得られる一番リスクが少ないオレンジの点ではなく、リスクは少し多いけれども利回りもその分高い赤の点で示されるポートフォリオと組み合わせる事に注目してください。これは株式の投資はリスクを減らす事が第一目的ではなく、利回りが目的で、リスクとのバランスが取れていれば良いからです。もしリスクを減らしたければ、株式を組み合わせて減らすよりも、リスクフリー資産と組み合わせて減らしたほうが、利回りは良くなります(オレンジの点よりも直線が上にあることで分かります)。

4. 分散投資の現実

分散投資を行うと、理論上はリスクを低く抑えたり(オレンジの点)、リスクと利回りのバランスが取れた(赤の点)ポートフォリオを組むことができることが分かりました。それでは、現実的にこういった理想的な状態のポートフォリオを組むことができるのでしょうか?

現実問題

現実にはいくつかの理由で、オレンジや赤の点のポートフォリオを簡単には組むことができません。まず考えなければいけないのが、データの変動です。リスクは利回りの変動で示されますが、株価で言えば刻一刻と変動しており、一定しません。株価同士の相関関係も常に変化しています。

ある程度長期的な期間のデータから計算すれば、1日単位の変動はそれほど気にしないで済みます。では、どのくらいの期間のデータを取ればいいのでしょうか?過去3年間?10年間?50年間?どの期間をとってもどちらが「正確」なデータというわけではなく、統計をどのように取るかの違いに過ぎません。データの取り方で結果も違ってくるのは当然です。

さらに一番最適な赤の点を決めるためには、リスクフリーの投資先、つまりTreasury-Billの利率を必要とします*5。ところが、T-Billの利回りは発行するたびに変わっていきます。当然、リスクと利回りのグラフも変わってしまいます。そのたびにグラフを引きなおして株を買いなおすのは、手数料が無駄なだけでなく、税金が掛かってしまいます。

現実的な解決方法

それでは、投資対象として何を選べばいいでしょうか。株式への投資としていちばん簡単なのはIndex Fund 投資です。

Index Fund だからといってオレンジや赤の点のように最適な株の組み合わせになっているとはいえません。しかし、多くの有名なIndexは常にグラフの左端近くに位置し、極端にリスクが高くなることがありません。Index Fundがお得な理由で説明した理由もあって、ポートフォリオの中心になるファンド(Core Fund)はIndex Fundから始めるといいでしょう。

リスクフリーの投資はどのようにすればいいでしょう?簡単な方法は銀行預金(Savings AccountCD)、Money Market FundTresury BillSavings Bondなどの現金資産として保有する事です。これらはどれもリスクフリー、もしくは限りなくリスクフリーに近い運用先です。生活費など普段使うお金とは別に、現金資産を取っておきましょう。これは緊急資金(Emergency Fund)と考えても構いません。

分散投資の具体例

それでは実在のファンドを使って、リスクと利回りのバランスの取り方を見てみましょう。ここで示す例はあくまでも参考のためで、特定の投資を勧めるものではありません。

分散投資の対象として、Vanguardの500 Index (VFINX)を考えてみます。このFundはS&P 500 Indexに基づいたファンドで、Index Fundとして定評があります。Yahoo!Financeで確認すると、このファンドの10年間の平均利回りは9.27%、リスク(Std. Deviation)は16.99です。またTreasury-Billをリスクフリーの投資として使うと、利回りは1.2%ほどになります*6。この2つの投資先をグラフで示すと次の図のようになります。

VFINXとT-BillのCAL

この2つの投資割合を決めれば、直線上で表されるどのポートフォリオでも組めます。例えば、利回りの目標を6%にしたいときは、直前上のの点になります。2つの投資割合はの位置から、VFINXがおよそ6割、Treasury-Billが4割になります。

ところが、10年ではなく、過去5年を見てみると、マイナス0.61%の利回り、過去1年になると何とマイナス22.15%です。これではリスクを取る代わりに利回りが高くなる右肩上がりの直線が引けません。

このように、現実のポートフォリオでは単純に直線を引いて割合を出せるものではありません。どの期間のデータを取るかで結果が変わってくるからです。ここでは実際の投資でこのような直線を引くことが重要ではなく、考え方が重要である事を理解しておいてください。まず、リスクがある投資は、その分、利回りも高くなければなりません。グラフが右上がりになるからこそ、意味があるのです。あるいは右肩上がりになることを期待して、投資をする事になります。右肩上がりのグラフはリスクを取ればその分、利回りが高くなるのです。

の点は2つの投資の合計であることにも注目してください。利回りが6%でリスクが10(もしくはそれ以下)の投資対象が見つからない場合、リスクが高い株式ファンドと、リスクが全く無い(とされている)Treasury-Billを組み合わせることで、目指しているリスク/利回りの割合を実現できます。自分に合った投資とは「どの投資先が一番いいか」を探すのではなく、「どのような投資の組み合わせが一番自分にあっているか」を探すことなのです。

*1 : 厳密にはこういう風に分散投資が「発見」された訳ではありません。興味がある人は金融関係の歴史を勉強するといいでしょう。
*2 : このグラフのようにはいきませんが、例えば石油業界(石油価格が上がると儲かる)と航空業界(石油が高くなると利益が減る)は株価が反対方向に動く傾向があります。
*3 : 絶対に売らないとまでは決めなくても構いませんが、売るときの条件を株を買う前に決めるのが良いでしょう。例えば損失が40%を越えたら売るとか、株価が倍になったら保有数の半分を売る、などの条件をあらかじめ決めておきます。
*4 : この範囲を算出するにはそれぞれの株価のリスクと利回り、また5つの株の間の相関関係が必要になります。
*5 : リスクフリーの投資先の利率は、ちょうどグラフの切片で示されます。
*6 : 2003年4月の執筆時点でのデータ
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